ブログ「石原明の経営のヒント」

パスモ人気の秘密?!

今春3月18日から鳴り物入りで始まった、電車もバスも乗れるICカード乗車券「PASMO(パスモ)」が、予想を超える人気ぶりです。年間で500万枚と予測していたものの、ふたを開ければ1カ月を待たずに300万枚を突破。追加発注のカードが私鉄各社に届くのは8月ということで、今は定期券以外は手に入らない状況となりました。

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ご存じのとおり、首都圏のICカード乗車券は、JR東日本のSuica(スイカ)が先行していて、そこに、「PASMO(パスモ)」が新規参入したかたちですから、どこまで浸透するか私も注目していたわけなんですが、そんななか、先日の新聞で、このPASMO(パスモ)のアートディレクションを手がけた電通の小塚重信さんの記事に目が止まりました。

ICカード乗車券という商品は、年齢・性別・職業・国籍など、ユーザー層が特定できないものなので、コンセプトとして『単純で誰にもわかりやすく、何やら楽しそうなもの』を目指したんだそうです。

日本語を使わない人にも、一目で「電車もバスも」という利便性が伝わるように「ピクトグラム(絵文字)」を利用し、概念を単純化させましたが、単にわかりやすいだけではダメだと考え、さらに彼は、わかりやすさと楽しさを共存させることを追求していきました。

例えば、色使い。シルバー地にピンクの絵文字のデザインなんですが、見た目の鮮やかさは必要なものの、ビビッドすぎると若い女性のイメージが強くなりすぎるので、品位を損なわず、まろやかで優しい色合いを追求するため、何度も試行錯誤を重ねて、現在の配色に行き着いたようです。

また、ICカードは、どうしてもビジネスイメージが強いものですから、そこから最も遠い位置にありそうな高齢の女性や子どもたちが持ってもおかしくないカードを念頭においてデザイン。バスは窓の数を増やし、電車はパンタグラフの形にこだわったと小塚氏は語っています。

普通は、「テーマやコンセプトといった、形のないものを具体化することがデザインのひとつの目的」だと考えますが、彼は「それだけではおもしろくない」と考え、「見る人とのコミュニケーションが面白くなるようなアイディアをひねり、分かりやすく、かつ楽しげな視覚伝達を目指した」と言います。

その効果かどうかわかりませんが、今や子どもたちの間でも、すっかり、「PASMO(パスモ)」が認知され、子ども用パスモを持っている子は、友だちから尊敬のまなざしで見られているそうですよ。

パスモ人気の秘密は、何もデザイン性だけに限ったことではないかもしれませんが、自社をブランディングしたり、販促物を作ったりする際には、このパスモの成功事例が多いに参考になると思います。

セブン&アイの「nanaco(ナナコ)」 」やイオンの「WAON(ワオン)」など、電子マネーが次々登場し、しのぎを削る中、今後のパスモの展開に、しばし注目してみようと思います(@^^)/~~~

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