ブログ「石原明の経営のヒント」

日本でただ一人の「ブックディレクター」

最近ちょっと思うことがあります。昨年末から、派遣ギリやリストラなど、雇用不安が叫ばれていますが、人が一生のうちで多くの時間を費やす「働く」ということに関して、その概念を変える(いや、基本に立ち戻るといった方がいいかもしれません)べき時が来ているように感じるのです。

当社も、「LADDERS」というユニークな人事評価制度を研究開発しているのでなおさらよくわかるのですが、人が本当の意味で、自分の才能や能力を仕事に活していくと、単なる「成果」を追求するのとは全く違った結果が生まれてくるものなのです。

そんなことを考えていたら、ふと、この人のことを思い出しました。最近、メディアからも注目を集め始めているのでご存じの方もいるかもしれませんが、日本でただ一人の「ブックディレクター」というお仕事をされている幅 允孝(はば・よしたか)さんという方です。

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彼の経歴をざっと紹介すると、青山ブックセンター(六本木店)での建築・デザイン書のバイヤー、その後書籍の編集者を経て2005年10月に独立。彼率いる選書集団・BACH(バッハ)は、「Tsutaya Tokyo Roppongi」の本棚のプロデュースで脚光を浴び、本をツールに、本に関わるあらゆる分野で、お名前どおり"幅広い"活躍をされています。

上の写真も彼の「作品」なのですが、「SHIBUYA PUBLISHING&BOOK SELLERS」という書店の本棚で、彼が手がけたことで、なんと客単価は一般書店の3倍なんだとか(@_@;) 書店の本棚のほかにも、病院であったり、予備校であったり、結婚式場であったり・・・とにかく彼が本を並べることで、人を呼べるわけなんです。

昨今、「本の売れない時代」と言われていますが、幅さんいわく、「本屋に人が来ないのなら、人が集まる場所に本を置けばいい」・・・まさにそのとおり!ですよね。こんなふうに柔軟な思考を持っているからこそ、彼は自分の才能を活かしながら、世の中にない「職業」を創り出していけたんだと思います。

もちろん、彼は本が大好きで、例えばトラベルのコーナーに、ガルシア・マルケス(コロンビアのノーベル賞作家)を置いたり、スティーブンソンの『宝島』とアニメの『ワンピース』を並べたりするそうです。「本をどのように出会わせるか、どうしたら手にとってもらえるか、やれることはたくさんあるばず」という彼の言葉を聞くと、「本」の持つ価値と可能性をあらためて感じることができますよね(*^^)v

先月(2009年2月)、米アマゾンが電子書籍端末の新機種「キンドル2」を発表して話題になりましたが、こうした動きは、本のコンテンツを「データ」として活用することに価値を見出す方向性ですよね。対して、幅さんのしている仕事は、全く別のアプローチで、本そのものの価値を高めていくような活動です。

どちらが良い悪いという時限ではなく、本に関するこうした2つの流れを見ていると、とってもおもしろいと思いませんか? 個人的には、私も本が大好きなので、すべて「データ」になってしまうことには、多少の抵抗を感じますが、それはともかく、この幅さんがもし、経営者向けの本を選んだら、どんなセレクトになるんだろうと、興味を持ってしまいました(*^_^*) 

もしかしたら、そのうち、本のセレクトを職業にする人も出てくるかもしれませんね。どうやら、個人も企業も、「自分(たち)の仕事はこれしかない」みたいに、あまり強く思い込まないほうがいい結果を生みそうです。参考にしてください(@^^)/~~~

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