ブログ「石原明の経営のヒント」

リンナイがサイトで部品を販売をするわけ

今やネットで買えないものはないくらいの世の中ですが、大手ガス機器メーカーのリンナイが、エンドユーザー向けに、ガスコンロなどの交換部品などを直接販売するサイトを運営し、地味な製品ながら確実にファンを拡げつつあるようです。

サイトの名前は『R・STYLE(アールスタイル)』といいますが、通版サイトながら、ここではガスコンロ本体の販売はせず、ガスコンロ上で鍋などを支える「ごとく」や、焼き魚グリルの「焼き網」など、ユーザーが自分で交換できる部品だけを販売しているのです。

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ひと口に部品と言っても、その数は3千点(@_@;) ガスコンロにもいろいろなタイプがありますから、すべての部品を揃えると、こんな数になってしまうのでしょう。リアルの店舗で、3千点の品揃えをするのはかなり厳しいことですが、ネットなら、難なくすべてを網羅することができます。

これまで、同社のようなガス機器メーカーは、その製品をガス会社や住宅メーカーに卸すだけで、直接、消費者との接点を持たないのが普通でした。しかし、万が一、ガス機器の事故などがあれば、その責任は一手にメーカーが背負うことになります。

世の中の流れ的にも、その製造者責任が一段と厳しく問われるようになったこともあり、同社では、顧客と直接つながり、その声をもっと製品づくりに活かせないかと考えたようです。2005年から、経営企画部内に「eビジネス推進プロジェクト」を立ち上げ、翌06年にオープンしたのが、上記のサイトです。

開設当初は、「コンロの部品がメーカーから直接買える」ことの認知度が低く、来訪者はあまり増えなかったようですが、少しずつクチコミやブログなどを通して主婦層に広まっていき、開設約2年で、サイト経由の部品注文が電話経由を逆転したそうです。

もともと、「油汚れが付きやすいガスコンロ周りをキレイにしたい」というニーズは、消費者のなかに、根強く存在していたと思います。しかし、部品がどこで買えるかが、よくわからなかったんじゃないでしょうか? 「ごとく1個のために、わざわざメーカーに電話するって、心理的なハードルも高いですよね(ーー;)

その点、ネットショップなら気兼ねなく買えますし、メーカー側も部品の交換方法や、ガスコンロのお手入れの仕方などの周辺情報を、ユーザーに確実に伝えることができます。同時に、ユーザーとの交流媒体としての機能も発揮していて、現に購入者の約17%が、意見や感想を投稿するそうですよ。

メーカー側では、その声や意見を、製品やサービスの改良につなげたり、開発部門にフィードバックすることで、新製品開発にも存分に活かすことができるはずです(*^^)v 同社でも、今後は、交換部品だけでなく、コンロ向けの洗剤や、料理グッズなどの販売も手がけていく予定だそうです。

そうなると、ますます「ファン」が増えることは確実です。経営から考えても、このサイトが欠かせない機能になりますよね。こんなふうに、業界が地味であればあるほど、確実にユーザーとつながる機能を持った会社に軍配が上がります。

こうしたサイトは、通販サイトでありながら、テストマーケティングの機能をも備えつつ、顧客フォローのしくみとしても価値あるものになるからです。それなりに手間はかかるでしょうが、本気でサイトを運営していく意味があると思います。

ちょっとだけ心配なのは、既存ルートであったガス会社や住宅メーカーの反応ですが、これも本体自体は販売しないことで、クリアしているのかもしれませんね。将来的には、サイトに来たお客さんのなかで、工事が必要な方などを既存ルートの会社に紹介できるようになったりしたら、それこそ誰も文句は言えないはず。

交換部品の通販サイトは、運営しだいで「集客」の機能を果たすまでに成長する可能性もあるのです。この事例は、他の業界でもかなり参考になるんじゃないでしょうか? 情報化社会の進化で、ユーザーの感覚は確実に変わっています。自社のマーケティングも、その変化に合わせ、随時見直す必要がありそうですね(@^^)/~~~

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