ブログ「石原明の経営のヒント」

日本人の心得―裁判員になったら読む本

この本は、当社の子会社であるCKパブリッシングから出版した本ですが、私としては「世の中に出したい本をついに出せた!」という感じの一冊なんです。タイトルのとおり、「裁判員制度」の根本に流れるものをとてもわかりやすく説明していますが、本当の狙いは、裁判員制度をベースにして、日本という国がたどってきた歴史と社会構造をわかってもらおうとして書いてもらった本なのです。

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著者である岩井重一先生は、東京弁護士会会長、日本弁護士連合会副会長を歴任された方で、小泉改革のときに司法制度改革を推し進め、裁判員制度をはじめ法科大学院や日本司法支援センター(法テラス)の設置などに関する重要な働きをされ、まさに法曹界の重鎮といった存在の方です。といってもみなさんにはなじみが薄いでしょうから、映画「それでもボクはやってない」のモデルになった事件を担当した弁護士事務所のトップ・・・という紹介の方がピンとくるかもしれません(*^^)v

今年5月からスタートした裁判員制度ですが、マスコミの論調としては、マイナス面をクローズアップするものが多いですよね。しかし、この制度の背景を知ると、裁判員になることは「義務」ではなく「権利」なんだと納得できるはずなんです。

その背景とは、日本の「民主主義」の性質です。海外の多くの国では、王様の支配から民衆が闘いによって「勝ち取った」民主主義です。しかし、日本の民主主義は、ある日突然「与えられた」民主主義なのです。ですから、日本人の中には、今でも若干「裁きはお上(おかみ)から受けるもの」といった感覚が残っています。

ちなみに、こんな感覚の国は先進主要国の中にはありません(ーー;) 日本では刑事事件で検察に起訴された人が、裁判(第一審)で有罪になる確率は99.9%に及びますが、これは世界でも類を見ないほどの異常な高さなんです。しかし、そんなことを気に留めている人は、ほとんどいませんよね。

少し大げさかもしれませんが、今の日本は危機的状況にもかかわらずに、誰も「自分ごと」として関心を持っていない恐ろしい社会とも言えるのです。裁判員制度は、そこにメスを入れる最後のチャンスかもしれない・・・そう考えていただくといいかもしれません。

また本書は、「そもそも法律とは何か」「刑事法と民事法の違い」といった基本的な話題にふれ、法律を学ぶ機会のない多くの日本人に、憲法が保障する民主主義・国民主権などの根本的な国のあり方について丁寧に解説しているので、現在の日本のしくみを近代史の流れから知る教養書としてお読みになるのもいいと思います。

私は、大人と子どもの差は「客観的にものごとが見られるかどうか」だと思っているのですが、大人は自分の意思で、いろいろな情報を取ることができますよね。そして、そこから「客観的」な判断を下せます。

ですから、日本が変われるチャンスでもある「裁判員制度」についても、ただマスコミの論調に流されるばかりでなく、ぜひみなさんには「大人」の判断を下していただきたいと、心から思っています(@^^)/~~~


★なお、著者インタビューがこちらからお読みいただけます。

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