ブログ「石原明の経営のヒント」

ヒュンダイ自動車躍進の秘密は「カイゼン」からの脱却だった!?

東日本を襲った大震災の爪あとが、日を追うごとに色濃く浮かび上がってきています。被害に合われたみなさまには心よりお見舞い申し上げますと共に、一日も早い回復を願ってやみません。その後続いている福島原発の問題もあり、日本経済は深刻な局面を迎えています。今、私たちにできることは何か・・・そこで今回は敢えて、韓国の現代(ヒュンダイ)自動車の事例を取り上げ、経済の躍進に向けて必要な経営者の発想について、あらためて考えてみたいと思います。


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近年、ヒュンダイが世界各国で販売数を伸ばしていることはご存じの方も多いと思いますが、今年(2011年)のグローバル販売計画台数は、前年比10%増の約633万台で、この計画を達成すれば、トヨタ自動車、米GM、独フォルクスワーゲンに次ぐ「世界第4位」の座を獲得することになるようです。

躍進の理由には、もちろん巧みなデザイン戦略や品質力の向上といったことも挙げられるのですが、最大の要因は「トヨタの生産方式からの脱却」にあるとみる向きもあるようです。同社は90年代まで、トヨタに追いつくことに躍起になり、「カイゼン活動」などを積極的に導入していたのですが、2000年に入ってからは、全くの方向転換を図っていたのです(@_@;)

そもそもトヨタで「カイゼン」が功を奏しているのは、長期雇用や徹底した人材育成のしくみが整った上での活動だからです。「カイゼン活動」は労使に協調関係があってこそ、初めて成立するもの。一方、ヒュンダイの場合は、労使対立によるストなどもよく発生するような企業風土で、生産ライン作業者の多くは時給で働いているようです。

つまり「トヨタ方式」は、トヨタだから機能するしくみであって、他社が表面的にマネをしても、一朝一夕に成果が上がるものではないということです。それどころか、「カイゼン」を進めたためにかえって現場が混乱し、トラブルを起こしている企業もあるほどです(ーー;) 

社内に「カイゼン活動」を導入すると、就業後にサービス残業をしてまで、班内でミーティングを持ったりするようなことが頻繁に起こります。そこで生産性を上げるための提案が数々出され、社内から徹底的に「ムダ」が省かれていくわけですが、現場の小さなムダを省き続けることが経営の躍進に繋がるのかと冷静に考えると、そこには大きな疑問が残りますよね。

そこで、ヒュンダイは、いったいどうしたと思います? 「作業者にカイゼン活動を極力させない」ことにして、その代わりカイゼン専門の担当者に超エリート人材を登用したのです(*^^)v 

そして、各生産ラインにビデオカメラを設置し、何かしらの不具合が発生すると、カイゼン担当者がそのビデオを何度もリプレイしながら、問題の原因を突き止めていくようにしたそうです。この方式を進めるために、世界中の工場のカメラがインターネットを介して韓国の本社に接続され、一元管理できるようにしたのです。

結果、急いでしなくても良いような細かなカイゼンはほおって置いて、本当に急所を突くような重要な問題点だけが解決でき、効率が飛躍的に向上したようなのです。

私たちは、この事例から何を学ぶべきでしょうか? 日本人は「全社一丸」といったメンタリティを好む傾向にありますが、全社挙げて「生産性の向上」に走ることこそが、何よりも「非生産的」であるような気がしてなりません。効率化、効率化と突き詰めていった先には、ちょっと風が吹けば簡単に倒れてしまうような弱い会社が出来上がってしまうのです(>_<)

自動車のハンドルにまったく"遊び"がないと、事故を招きやすいのと同じ理由です。経営の緊迫した局面を打破できるのは、常に「既成概念を外したアイディア」であり、それは「カイゼン」の先にあるものでは決してないと私は考えています。

日本国内でも、しばらくは自粛ムードが続くと思いますが、こうした時期だからこそ、経営者の大胆な発想やアイディアが必要なのです。ぜひ前を向いて、日本経済躍進のために、一緒に知恵を絞っていきましょう(@^^)/~~~

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