ブログ「石原明の経営のヒント」

業界の"おきて破り"!? 新感覚アニメ『タイガー&バニー』

今年(2011年)4月から毎日放送系で深夜に放送されていた『タイガー&バニー』というアニメをご存じでしょうか? 9月に一旦放送が終了したものの、その人気ぶりから現在再放送中ですが、何がおもしろいって、アニメに登場するヒーローたちが企業や商品の"ロゴ"を付けて戦うという異色のアニメなんです(@_@。

そのスポンサー陣には有名企業がズラリ!ソフトバンク、ペプシネックス、バンダイ、アマゾン、DMM、カルビー、富士通「FMV」・・・牛角や「イエス!高洲クリニック」までが名を連ねていたのにはちょっと笑ってしまいましたが、アニメに登場するのは「職業(正社員)」としての8人のヒーローたちで、スポンサーロゴを背負って企業のイメージアップのために、凶悪事件の解決や人命救助に奔走するのです。


s-Tiger&bunny.jpg


"アニメの威力"については、このブログでも折りに触れてお話してきましたが、かつて『巨人の星』が野球人気をつくり、『キャプテン翼』がサッカー人気を支え、『テニスの王子様』がテニス人気を呼び込んだように、アニメは常にマーケットに強烈な刺激を与える存在です。

ですから企業としても、もっと実験的に「アニメ」を活用してきてもよかったはずなんですが、これまでは企業側もブランドイメージを守るため、企業や商品の「ロゴ」の取り扱いには異様なまでに神経質でしたよね。ヒーロースーツにロゴをプリントするなんて、まさに"ありえない!"話でした。

しかし、この「おきて」を敢えて破ろうと考えたのが、あのガンダムで有名なバンダイナムコグループの「サンライズ」です。しかも、キャラクター原案&デザインは桂 正和氏、脚本は映画やドラマを手がける西田征史氏、監督はさとうけいいち氏という一流クリエーターたちが本気で創っているところがまたおもしろいじゃありませんか!(^^)!

一流どころを使うということは、それなりの制作費も必要です。そのために採ったマーケティング手法が、実際の企業名や商品名を作品中に使う「プロダクトプレースメント」なのです。

この手法自体は「マトリックス」などのハリウッド作品にも使われているものですが、『タイガー&バニー』ではこれをさらに進化させ、ストーリー上も「ロゴ」に重要な意味を持たせたり、テレビCMにもアニメのキャラクターが登場するといったシームレスな関係を実現しています。

スポンサー集めには、広告大手のアサツーディ・ケイとの連携が功を奏したようですが、スポンサーは、キャラクターごとに協賛金を支払うスタイルになっているようで、「1社独占」とは真逆に位置する、番組スポンサー企業との新しいタイアップのあり方を見せてくれています。

さらなる「おきて破り」は、番組を動画サイトに"同時配信"したほか、放送後1週間無料配信を続けたことです。その昔、テレビといえば「家族一緒にお茶の間で」見るものでしたが、今は圧倒的に「自室で一人で」見る人が増えています。だからこそ、動画サイトにコメントを書き込んだり、twitterでつぶやきながら仲間と盛り上がりたい、という人たちが増えているのでしょう。

"本気のメディアミックス"を実現するには、それなりの軋轢もあったでしょうが、これまで放送終了後のDVD販売に頼っていたモデルを、自らの手で完璧に打ち崩した感があります・・・と言いつつ、DVD販売も好調で「視聴者が見られる機会を増やせば、むしろDVDの販売数を伸ばせる」という新たな法則を証明した格好になりました。

それはともかく、テレビ番組制作の新しいモデルとしての価値は、かなり高いと思います(*^^)v しかも、このアニメを見ていた子どもたちが、その企業のことを好きになって「将来はそこで働きたい」なんて思うかもしれませんよね。これまでなかった方法でリクルート効果を狙えるんじゃないか・・・なんて深読みしてしまいました。

どんな時代でも、そしてどんな業界でも、活路を見い出す方法はあるものですね。この事例を参考に、あなたのビジネスを"新感覚"で捉え直してみてはいかがでしょうか(@^^)/~~~

経営コンサルタント石原明 公式サイト 石原明.com
経営次進塾
キクタス