ブログ「石原明の経営のヒント」

のぼうの城(上・下)

今回ご紹介するのは、『のぼうの城 上・下』(和田竜著・小学館文庫)です。
昨年(2012年)映画も公開されて話題になったので、すでに読んだ方も多いでしょう。もちろん歴史エンターテイメント小説としても珠玉のデキですが、この本はぜひ「経営書」として読んでいただきたいと思い、おすすめしているのです(*^^)v

じつはある顧問先の社長さんから「石原先生の組織論とよく似たことが書いてあるんです!!」とちょっと興奮しながら紹介されたので(笑)、早速沖縄出張に持っていき宿泊先のホテルで読み始めたのですが・・・あまりのおもしろさに途中で止められなくなり、翌日のハードスケジュールをかえりみず、結局明け方まで読んでしまった本なんです(^^ゞ


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「のぼう」とは、主人公である成田長親のこと。忍城(おしじょう・埼玉県行田市にあった城)城主・成田氏長の従妹でありながら、馬にも上手に乗れず武将に求められる資質ゼロの男で、かといって農作業をしてもその不器用さからかえって足手まといになる始末。まさに「でくのぼう」を絵に描いたような人物なんですが、なぜかみんなから「のぼう様、のぼう様」と親しみを込めて呼ばれ、愛されているんです。

この忍城に天下統一を控えた豊臣秀吉の命で、石田三成率いる2万の兵が攻めてきたからさぁたいへん! 城主は「一戦も交えず速やかに開城せよ」と言い残し小田原城へ。しかし、あとを任された「のぼう様」は、うっかり敵軍にけんかを売ってしまったのです(ー_ー)!! そこから500人対20,000人というありえない戦が始まるわけなのですが・・・。

リーダーシップにはいろいろなカタチがありますが、この長親は「人心を掌握する」タイプのリーダーで、彼を取り巻く個性派たち(武勇に優れた正木丹波、荒くれ者の柴崎和泉、兵法書を読破し実戦経験がないにも関わらず「軍略の天才」と豪語する坂巻靭負ら)や農民たちまでもが「のぼう様がやるって言うんじゃ仕方あるまい!」と、それぞれの持てる力を惜しみなく発揮し、一致団結してしまうのです。

それどころか、戦の終盤にはある奇策を講じ、敵軍の心まで掌握してしまう・・・これぞ「のぼうスタイル」なわけですが、じつは今、こういうマネジメントがキテるんですね(*^^)v 命令で部下を動かす時代はとっくの昔に終わっているのですが、残念ながらそのことに気づいている経営者の少なさにはびっくりしてしまいます。

なぜそうなのかについては、私の主宰する『高収益トップ3%の倶楽部』の来月の勉強会でもお話しようと思っているのですが、リーダーシップや組織運営に関する本やセミナーでは、未だに「率先垂範」「背中で教える」「結果責任を取る」などと教えられているものです。しかし、時代は変わったのです! トップはこのことに早めに気づく必要があります。

これからは、優秀な部下を伸ばしながら経営していくようなスタイルでないと会社の存続さえも危うくなってくるでしょう。最近、スターバックスコーヒージャパン元CEOの岩田松雄氏にお会いしたのですが、ご著書の『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』も、すごく売れているみたいです。その本の帯にあるキャッチは「リーダーは、弱くてもかまわない。」なんですが(笑)、時代はまさにこんな感じなんです(^_^)v

これはトップからではなく、ボトムからのムーブメントで、現場では「もう古いマネジメントはやめてくれ~!」という悲鳴にも近い声が上がっています。もしかしたら社会現象に近い感じかもしれませんが、『のぼうの城』のヒットは、こうした旧態依然とした組織運営にたいするアンチテーゼなのかもしれませんね。ぜひそんな視点を持ちつつ、読んでみてください(@^^)/~~~

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