ブログ「石原明の経営のヒント」

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

今回は、あえて村上春樹氏の小説を取り上げてみました。今年(2013年)4月12日に発売されたのですが、前作『1Q84 BOOK3』以後、3年ぶりの書き下ろし長編小説で、発売までその内容は一切内緒!だったいうのに、予約は続々と入り続けました。

ネット書店のamazonでも3月15日から上で予約受付が開始されたのですが、わずか11日間で1万部を突破!! 前作『1Q84 BOOK3』よりも1日早いペースで、アマゾン営業開始以来、史上最速となったそうですよ。つまり、発売前にベストセラーが決定していたという、いろんな意味で注目すべき作品なんです。情報化社会のなかで、「告知しない」ことが、最大の「告知」になったのかもしれませんね(*^^)v


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もちろん、リアル書店の反応も上々で、代官山の蔦谷書店では4月11日の深夜から「世界一早く新作が読めるイベント」を企画。発売当日の深夜0時、カウントダウンともに発売が開始されたり、紀伊國屋書店新宿南店や丸善丸の内本店などの都内大手書店では、開店時間を早めてこの本のデモ販売を行なったり・・・まるでボージョレヌーヴォーの解禁さながらの熱狂ぶりでした。

さらに、タイトルに出てくる『巡礼の年』から、同名のフランツ・リストのピアノ独奏曲集が注目されたり(『1Q84』で印象的に使われたレオシュ・ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』は異例の売り上げを記録しましたからね)、折しも今年の日本は、出雲大社の60年に一度の大遷宮と伊勢神宮の20年に一度の式年遷宮が重なる貴重な年であることもあって、「巡礼の旅」がブームの兆しを見せていたり・・・もうこれは社会現状と言わざるを得ません。

本やCDの売れない時代に、本当にスゴイ現象だと思いますが、本の持つ価値を知るには、やはり小説を読むべきだと思います。私も最近つくづく思うのですが、経営を志す人が、ビジネス書だけを読んでいるようでは、とても「語彙」が足りません。もっと言えば、人の心の機微がわからない人には、真の経営はムリだと思うのです。

そういう意味でも、みなさんにもっと小説を読んでほしいと思うのですが、この本では、主人公の「多先つくる」が、青年から少年、そして大人の男になっていくまでの心の葛藤と成長が村上春樹氏独特の描写で描かれていているばかりか、人を愛することを知った人間はどうなるか、人を傷つけてしまった側の感情、人は常に自分の居場所、向かうべき場所、戻るべき場所を求め、探し、苦しむものだという人間心理が、主人公の姿を通して丁寧に表現されています。

「小説家」というのは、とてもすばらしい職業だと思います。この本を読みながら、私もいつかは小説を書いてみたいと真剣に思ってしまいました(*^_^*) 文章を書くというのは本当に奥深いことで、たとえば語尾を一字変えるだけで、伝わり方が全く変わってしまうんですよね。文章を書く立場として、みなさんにも知っておいてほしいことがたくさんあります。ぜひこれからは、意識して、ビジネス書以外の文章にも触れてみてください(@^^)/~~~

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