ブログ「石原明の経営のヒント」

「教えないから人が育つ」横田英毅のリーダー学

今回ご紹介するのは、「ネッツトヨタ南国」の横田英毅氏の経営哲学を、元ソニー上席常務であった天外伺朗氏が解き明かした一冊です。同社は私の提唱する「4ステップマーケティング」を地域でそのまま実践しているような会社なんですが、リーマンショック後苦戦の続いていた自動車業界で、唯一前年比150%で売上げを伸ばし続け、世の中をあっと驚かせた会社です。


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横田氏の経営哲学を端的に表現すると「任せるマネジメント」ということになるのですが、社員の人間性を尊重し、「叱らない、教えない、やらせない」というポリシーのもとにすべてを自主性に任せると・・・やがてみな、やりがいを感じながら働く社員になり、自ら考えて行動できる優秀なリーダーが育つ、というわけです(*^^)v

しかし、全ての会社が同じことを実践してそのとおりになるかというと・・・そこは「???」です。任せて大丈夫なのは「ネッツトヨタ南国」だから、と言う部分も大きく(笑)、同社は全国から会社見学の人が絶えないような社会的に注目されている企業であり、名刺を出す度にプライドが満たされるわけで(合コンでも圧勝でしょう...笑)、そんな環境で働けるなら、人は勝手に育っていくものなのです。

また、同社のマーケティングは完璧に完成されていて、普通なら新車がズラリと並ぶはずのショールームには一台もクルマが無く、代わりに置かれているのは、ホテルのラウンジのようなスタイリッシュなテーブルと椅子(@_@。 さらに、おもてなし専門のスタッフが来場者に運ぶ飲み物は本格的なドリップコーヒーや紅茶、ココアなど約10種類もあるそうで、もちろんすべて無料! さらに、追加料金を払えばモーニングセットまで頼める・・・といった環境を、会社が用意してくれているのです。

これ、どういうことかわかります? 「寄付を募りたいならバラを渡せ」みたいな話で、たとえば街頭で何らかの寄付を集めたい場合、ただ募金箱を持って立っているだけの場合と、無料でバラの花を配り、その後でさりげなく募金箱を差し出す場合とでは、集まる募金の額が大きく違ってくるのと同じように、同社のショールームでモーニングを食べた方々は、「いつか車を買い替えるときが来たら、ここに頼まないと悪いよね」みたいな気持ちを抱いて当然なんです(*^_^*)

こんなふうに、会社がマーケティングとブランディングに成功していれば、そこで働く人の多くはすくすくと育っていくわけで、だからこそ「任せて安心!」なのです。そんな視点を持ちながら本書を読んでいただくと、また違った読み解き方ができると思うのですが、創業時のソニーでも「任せるマネジメント」が行なわれていたのは有名な話ですし、私が支援している"全員がニートで、全員が取締役"というNEET株式会社の組織も、同じ手法で運営されています。

そう考えると、世界を変えるような企業になりたければ、「任せるマネジメント」しかないように思えますが、この本に書いてあることすべてを絶賛するのではなく、本に書いてあることと、自社の現状を冷静に比較するような高い視点を持ちながら、読んでみてほしいと思います。そしてよかったら、感想も聞かせてくださ~い(@^^)/~~~

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